2017年4月14日 (金)

ロバとブラウンさん物語

三原作品と出会う前の話をもうちょっと。
あまり大っぴらに書くような話ではありませんが、まあ、昔話ですし…。
同級生と女子大生のお姉さんと3人で渋谷に飲みに行ったことがあります。
文化祭に遊びに来ていた某女子大の漫研のお姉さんと友人が仲良くなって、
誘われて行きました。それ以前にもお好み焼き屋の打ち上げで
ビールちょっとくらいはありましたが、ちゃんと(?)飲んだのは初めてでした。
3人でロバートブラウン(ウイスキー)1本あけた気がする…^^;。

なぜロバートブラウンなのかは、もちろん(?)、
「花岡ちゃんの夏休み」に出てくる「ロバートブラウン物語」です。
「ロバとブラウンさん物語」とも書かれていますが、いずれにしろ、
花岡ちゃんと簑島さんの出会いのきっかけとなった架空の本のタイトルです。
Dsc06241m2
雑草社『ぱふ』1983年9月「特集 清原なつの」号p37(左)と、清原なつのさん『花岡ちゃんの夏休み』1979年RMC(右)。

清原なつのファンという共通点があったのですね。
ロバートブラウンを飲みながら清原なつのさんや
他のマンガの話をしていた筈ですが、詳細は覚えていません。
ただ、妙にお姉さんになつかれて楽しかった記憶がうっすらとあり。
それきりだったのですが、いい思い出ですね…。
「花岡ちゃんの夏休み」を今読み返してみると、
若ハゲの簑島さんにエールを送りたくなります(苦笑)。

自分が少女マンガを買っていたのは小さな本屋さんでしたが、
駅前のビルにはもっと大きな本屋さんがありました。
こちらもよく利用しましたが、目立つので少女マンガは買いにくく。
店の真ん中に「マンガ少年別冊 火の鳥」シリーズが
ずらっと平積みされていた光景が印象に残っています。

手塚治虫さん「月刊マンガ少年別冊 火の鳥 4 鳳凰編」1978年、朝日ソノラマ。

目立つところに置いてあったので立ち読みしずらかった…けど、ちょっと読んだかも^^;。
竹宮恵子さん「マンガ少年別冊 地球へ…」も立ち読みで読了。
本屋さんみなさま、色々読みしましたすみません…。
(昔は子供がマンガを立ち読みするのに寛容な本屋が多かったですよね)
お金が出せるようになってからは、どちらも買っております。
マンガ少年別冊ではありませんが(あれ、大きくて良かったな…)。

竹宮恵子さん「月刊マンガ少年別冊 地球へ…第3部 総集編」1979年、朝日ソノラマ

ねこねこ横丁」というサイトで、
清原なつのさんが「じゃあまたね」という自伝的マンガを連載中ですが、
「火の鳥」との出会いも描かれていました。
COM名作コミックス版ですので、自分より一つ時代が昔のもの。
「じゃあまたね」を読んでいて、時代は違うのですが、あー、似ているな…と思ったりして、
自分の子供の頃を思い出したりします。
書きたいことも色々出てきてしまう…またどこかで。

|

2017年4月 5日 (水)

少女マンガを買っていた小さな本屋さん

自分が「りぼん」を買っていたのは、街の小さな本屋さんでした。
奥にレジがあって、優しそうな初老の女性が
黙ってにこやかに対応してくれるので、買いやすかったのです。
きっと少女マンガを買いに来る少年として覚えられていたでしょうね…。
確かもう20年以上前にその本屋はなくなっています。
お世話になりました。

あの本屋のカバーがどこかに残っていたはず…と探してみたら、1冊だけ残っていました。
大島弓子さん『綿の国星』2巻です。もはやこの傷んだカバーが宝物…。

Img_6059m

しかし、「綿の国星 PART2 ペルシャ」が描かれた頃は、
まだイラン革命前だったのですよね…今読むとそんなことを考えてしまう。
白泉社系で初めて買ったコミックスが『綿の国星』だったと思います。
そのきっかけがどこから来たのか、もはやはっきり覚えていないのですが、
おそらく谷山浩子さん方面からではないかと。
大島弓子さんには、かなり早い時期に出会えていました。

その後、自己投企ブーム(?)のようなものがありまして、
まあ「りぼん」買っている時点で既にアレなのですが、
突然ギターを買ってかき鳴らし始めたり、新聞作ったり、ありがちな展開。
そうすると、バンドに誘われたり、交友関係が広がりまして。
(注:男子校ですので男子ばかりです)
そういう仲間には、少女マンガを含むマンガ読みが結構多く。
自分が『フランス窓便り』のコミックスを持っていると
「君は田渕由美子を読むのか!?」と声をかけてくれる先輩がいたり。

その頃の交友関係からの流入は多岐にわたり、
白泉社系・少女コミック系の少女マンガあれこれ、
青池保子さん「エロイカより愛をこめて」は秋田書店系、
大友克洋さん「気分はもう戦争」、吾妻ひでおさんとか
SFとか奇想天外とか×××とか…もう駄目ですね(^^;)。

ところが、これだけの洗礼を受けながら、まだ三原順さんには出会っていません。
明らかに「はみだしっ子」を読んでいたはずの人たちもいたのに。
その理由は2015年の三原順復活祭でやっとわかった気がしたのですが、
みなさん、三原作品はこっそり読んでいて、人に教えたくないものだったと。
なるほど…。
まあ、自分が男子主人公の少女マンガに手を出さなかったせいですけどね。

そんな訳で、三原作品との出会いは次のステージになります。

|

2017年3月17日 (金)

ダイエット

大島弓子さんの作品は概ね読んできていたのですが、
とりこぼしているものを少しずつ読んでいたりします。
「ダイエット」を読んでいたら、
新井素子さんの「あなたにここにいて欲しい」を思い出したりして、
書きたくなったので書きます。

以下、どちらのネタバレもありますのでご注意ください。

大島弓子 『ダイエット』、角川書店 あすかコミックス、1989年

大島弓子さん「ダイエット」は1989年「ASUKA」1月号掲載。
主人公は福子という太った高校生の女の子。
父親が別の女性と子供つくって離婚、福子は母とその新しい夫と暮らしている。
母親は新しい夫との間にできた子を大事にし、福子を構わない。
そういったことを食べては思い出し、思い出しては心の奥に埋める。
それを繰り返すうち福子はいつの間にか太っていた。
そんな福子は、友達に勧められるままにダイエットし成功。
けれど、友達にできた彼氏から優しく接してもらって、
自分が太っていても優しくされるのかを確かめたくなり、また食べて太ってしまう。
友達の彼氏は変わらず優しくしてくれる。福子はまたダイエットして痩せる。
福子は、友達のデートについて行きたがる。
友達の彼氏に気があるというわけでもなさそうで、友達は不思議がる。
福子は再び食べて太ろうとするが、食べ物を受け付けずに吐いてしまう。
そんな福子を介抱するうちに、友達は気付く。
福子が求めているのは親の愛であって、自分たちは彼女にとって両親のような存在なのだと。

1980年代、日本で心理療法のようなものを取り上げることが徐々に普通になっていった気がします。
ちゃんと勉強していなくてはっきりとは言えないのですが。
自分が「箱庭療法」というものを知ったのは、中村雄二郎さんの『述語集』(1984年、岩波新書)です。
村上春樹さんの『ノルウェイの森』が1987年ですね。
後になってから読んだものに、河合隼雄さんと谷川俊太郎さんの対談形式の『魂にメスはいらない』があります。

河合隼雄+谷川俊太郎『魂にメスはいらない(ユング心理学講議)』、朝日出版社、1979年

この本は、三原順さんもお持ちでした。
どこかで一度書いていますが、「はみだしっ子」に出てくる
「自立する事は孤立する事ではない」というジャックの言葉は、ここから取られているものと思われます。

「必要に応じてどの程度ちゃんと依存できるかというのは、むしろ独立心のあらわれみたいに考えています。
特に若い人たちがよく失敗するのは、独立しようと思って依存心をなくし過ぎるんですね。
ぼくは「あんたのは独立と言わずに孤立と言うんや」とよくひやかしているんだけどね。」
(『魂にメスはいらない』、p109)

これもまた「はみだしっ子」で使われる言葉ですが、
「あんたが生きてくれている方がぼくはうれしい」という河合氏の話もこの本にあります(同、p51)。
患者は真剣だから、ちょっとでも嘘が混じるとわかる。
だから、「生きるべきだ」でも「生きるのが正しい」でもなく「生きていてほしい」と言うのだと。

『あなたにここにいて欲しい』は、新井素子さんの1984年の小説。
こちらは当時初版で読んでいますが、細部はほとんど忘れていて。
ただ、人の心が読めてしまう超能力を持って生まれた女の子が、
母親に捨てられ、他人の感情に苦しみながら人を憎み、
最後には自殺するかのように精神をパンクさせて幼児退行してしまう、
というストーリーは覚えていました。
幼児退行してしまった彼女を、主人公が受け止めて育てるところで終わります。
今回、ざっと読み直してみたら、自分の記憶以上にきついストーリーでした。
主人公と共依存のようになった友達との自立も描かれているし、
自分の薄い記憶よりずっと重厚で改めてよかったです。

新井素子 『あなたにここにいて欲しい』 ハルキ文庫、2012年。(文化出版局、1984年)

タイトルがピンク・フロイドの曲「WISH YOU WERE HERE」からであることは、作者自身が書いています。
1975年の同名アルバムにあります。
このアルバムの「クレイジー・ダイアモンド(Shine On You Crazy Diamond)」という曲は、シド・バレットに捧げられた曲です。
シド・バレットはピンク・フロイドの初期中心メンバーで、デヴィッド・ボウイはじめ多くのミュージシャンに影響を与えた人物ですが、
音楽ビジネス業界に馴染めず、精神を病んで消えてしまっていました。
彼を削り世界的バンドとなったピンク・フロイドが、ふと彼を思い出して作ったようなアルバムです。
「あなたがここにいて欲しい」という邦題は、バンドから指定されてきたと、ライナーに書かれています。

Wishyouwerehere ピンク・フロイド『WISH YOU WERE HERE』1975年

一方、新井素子さんは、単行本のあとがきで、この邦題を意図的に一文字変えた、と書いています。

 あなたがここにいて欲しい。こう書けば、主格は『あなた』。でも、あなたにここにいて欲しいと書いた場合、主格は『私』になります。『あなた』はあくまで目的格で。
 これは、そういった、お話です。

謎かけのようですが、ふと、河合隼雄さんの言う「生きていてほしい」というイメージに似ていると思いました。

育て直しというと、今ではいくぶん胡散臭いイメージになってしまいましたが、 あの頃が、そのような物語が作られるような時代であったことは、なんとなく思い出せるのです。

昔、遺書を残して家出した娘の部屋で帰りを待つ母親と話をしました。
帰らない娘の部屋で、
新井素子さんの『あなたにここにいて欲しい』の単行本を見つけ、
一晩で読んだと、その方は話していました。
「まるで娘からのメッセージのように思えた」
真面目できっちりとしていた娘さん。
過食と拒食を繰り返し、ぶくぶくに太ったり、
がりがりに痩せたりを繰り返していました。
娘さんはその後、帰ってきています。
あの方は、娘にあの時のことを話すことがあったでしょうか。

「ダイエット」のラストに、あの頃わからなかったことを一つ、そっと教えてもらったような気がしました。

|

2017年3月 2日 (木)

スタジオライフ「エッグ・スタンド」

萩尾望都原作スタジオライフ「エッグ・スタンド」の舞台初日に行ってきました。
スタジオライフさんは、「トーマの心臓」「訪問者」「11人いる!」など数々の萩尾望都作品や、
清水玲子「月の子」、手塚治虫「アドルフに告ぐ」など、数々のマンガ作品を舞台化していて、
2001年には三原順「Sons」も舞台化している劇団です。
http://www.studio-life.com/stage/sons/

Img_5954
萩尾望都さんの「エッグ・スタンド」は1984年発表。
ナチス占領下のパリが舞台。
当時から強烈に印象に残っていて、立野も19年前に熱心に語っていました…恥ずかしいのでリンクしませんけど^^;。
それを書いた頃から19年間読んでいなかった訳なのですが、
セリフを聞けば次のセリフが自然と思い出されるくらいにはしっかりと覚えていました。
いろいろなことを思い出します。

しかし、実は自分の中では、スタジオライフさんが「エッグ・スタンド」を舞台化すると聞くしばらく前から、
三原作品との関連性において「エッグ・スタンド」は静かに反芻されていました。

「ぼくは多分 なにか忘れて生まれてきたんだね」

夢の事かのように殺人を繰り返す少年ラウルの言葉が、最近ふと、
三原順さんの未完の遺作「ビリーの森ジョディの樹」のビリーに重なって思えたりします。

もう少し探究中の何かが見えてきたら、またどこかで。

|